FZX750 エンジン不調とオイル漏れの原因を探る。
こんにちは。
今回はFZX750のエンジンからのオイル滲みと調子の悪い4番気筒を修理でお預かり。約20年前のバイクですが部品はまだある程度販売されているので助かりますね。
原因究明
まずはエンジンからのオイル滲み。シリンダー前側がオイルでドロドロになっていたので漏れている場所を特定するために洗車、清掃。そのあとエンジンをかけながらシリンダー周りをチェック。
クランクケースとシリンダーの間からオイル滲みを発見。経年劣化によるガスケット不良とおもわれます。アイドリング状態ではジワジワでも走行し負荷が掛かると漏れるスピードは早くなります。
4番気筒の不完全燃焼問題。アイドリング状態ではエンジン右端側のエキパイが熱くならないとのこと。温度計で測っても正常な1~3番は160℃くらいまでは上がるのに対し60℃くらい。右側のマフラー排気圧も左に比べて弱い状態。
点火、燃料、圧縮などの基本的なところをチェック。プラグは正常に点火していましたが、プラグコードとプラグキャップの接点が腐食していたので少しコードを切って取り付け。プラグキャップは古くなってくると絶縁性が失われてリークすることもあるので念のため交換。
ただ、アイドリング状態を続けているとプラグが異常に濡れていたので、燃焼室内に冷却水混入の可能性が疑われました。シリンダーのヘッドガスケットにパーツクリーナーを吹き付けるとアイドリングが不安定になることもあったのでエア吸い込みも疑われます。失火の原因の一つとなりうります。
エンジン分解
どちらにしろ、オイル漏れしているガスケットを交換しないといけないのでエンジン腰上を分解。
4気筒5バルブ。
シリンダーヘッド、ガスケットを取り外し。ガスケットは予想通り冷却水漏れによりふやけてかなりひどい状態になっていました。
燃焼室内も冷却水で濡れた状態になっており通常はスラッジ(カーボンなどの燃えカス)で真っ黒になっているバルブ周り、ピストン表面も洗われたのか綺麗な状態。冷却水がシリンダーとピストンの隙間に入り込みエンジンオイルの被膜不足による傷つきも心配でしたが大丈夫そう。すべての気筒に漏れが確認されましたが4番気筒以外は何とかエンジンがかかっていたみたいですね。
燃焼室内に冷却水混入はリザーバータンク側が減らずラジエーター側が減っていく場合がありますが、今回まだ症状が出始めて間もないためかエンジンを分解する前に確認したところあまり減ってはいませんでした。
ピストンが見えるところまで分解。オイル漏れの原因はここのガスケットが原因。ふやけているのがわかりますか?
ピストンリング、オイルリングはスラッジの付着も見られなかったのでお客様と相談した結果、清掃して再使用。オイルリングがスラッジで固着するとオイル上がりの原因になったりします。こまめなオイル交換は大事ですね。ちなみにピストンはすでに販売終了。
エンジン組み立て
シリンダー組付け前にすべてのスタッドボルトの突き出し量を点検。ここの緩み、突き出し量の違いでもオイル漏れや圧縮漏れなどの不具合の原因になります。
新品のベースガスケット、ヘッドガスケットを交換して組み付け。
新品と交換前のガスケットを比べると劣化の具合がわかりますね。
交換前。
新品。
エンジン始動時に白煙、排気ポートにオイル溜まりがみられたのでオイル下がりが考えられます。すべてのバルブのステムシールを交換します。
新品と比べるとかなり穴が広がっていますね。ここからエンジンオイルが抜けていきます。
エンジンは規定トルクで締め付け必須ですね。
マフラー取ってるんでついでにオイルパンのガスケットも交換。
最終チェック
エンジン組みあがり。あとはキャブレターと冷却経路組み付けで大まかな作業は終了ですが、不調の可能性を少しでもなくすためにキャブレターをもう一度細かいところまでチェック。
すべてのジェット類、パッキンなどをチェック。
ダイヤフラムの亀裂確認。ここに亀裂があると負圧が抜けるのでレスポンス不足など不調の原因に。
キャブレター組付け後、最後に同調を取って終了。4番気の不調とオイル漏れは直り、エンジンの調子は完全に戻りました。
キャブレター取り外し時に気づいた切れかけのアクセルワイヤー。危ないところでした。このような症状を見つけるためにも日頃からの点検は大事ですね。